小さな書斎に、たまりにたまった大量の本を整理することにした。多分千冊くらいはあるだろう。昨年亡くなった福原義春さん(資生堂のトップを長らく務め、多くの文化活動を支えた)の著書だけでも70冊を超える。これはもちろん別として、署名入りのものを除いて思い切って整理することにした。要するに廃棄するのだ。それぞれの本にはそれなりの思い出があるが、終活の一環として、今のうちにやっておかないと、後々家人に面倒をかけることになる。思い立ってやりだしたが、これが思いのほか時間がかかる。そのなかに毎年一度は読み返す本が数冊ある。
そのひとつが、ダニエル・キースの「アルジャーノンに花束を」だ。これは初版が1984年に早川書房から単行本として出され、以来文庫化されたりしてこのところまた書評で取り上げられるなどで再ブームの様相を呈している。著者のキースは、1927年生まれ、この作品でSF文学の最高賞であるヒューゴ賞を受賞。このほかにも「24人のビリー・ミリガン」などの心理サスペンスで人気作家となった。大筋はこうだ。32才で幼児の知能しかないパン屋の店員チャーリーは、ある日、白ネズミのアルジャーノンと同じ画期的な脳外科手術をうけて、あっという間に超天才に変貌していく・・。しかし時間の経過とともに脳の退化が始まっていく・・というストーリーだ。
人生のさまざまな問題と喜怒哀楽を繊細に描き、全世界が涙したといういわば、現代の聖書である。知識の追求の果てに、愛や優しさを失ってしまった主人公が唯一涙したのがアルジャーノンの死であり、すべての実験を忘れ、再び痴呆に戻っていく主人公が覚えていたのが唯一アルジャーノンの事である・・・。
新聞の文庫本売れ筋ランキングではこれが4位になっている。このほかにも処理できない本はいくつかあるが、会社が125周年の時に福原さんが全社員に贈ったジャン・ジオノ作の「木を植えた人」もそのひとつだ。これまで何度か読み返してきた。物品の記念品でないところが、いかにも福原さんらしい。
